はんこの部分ごとの名称
前回ははんこの呼び名について書きました。
今回ははんこの部位ごとの呼び方について書いていきます。
そこでまずお伝えすることがあります。「はんこ」というものは印顆と印影からできています。印顆がおしで、印影がしるしです。
法律上も印顆と印影から成ったものとあるようですし、実際、印影のないはんこは意味を成さないですし、印顆のないはんこも存在できません。
切っても切れない関係ですが、分けて考えなければならない印顆と印影について説明します。
印顆(いんか) : 柘や象牙、石などに字や絵が彫ってあり、紙などに捺せる状態にあるもの。これはゴム印などはんこ全般に使える言葉です。いわゆるはんこですな。でも何回捺しても印影が変わらないものでなくてはなりません。なのでスライムみたい柔らかいものに字や絵が彫ってあっても押すたびに印影が変わるようでは印顆とは呼べません。逆に焼印や縄文式土器の模様をつける縄ははんこっぽくなくても印顆です。
印影(いんえい) : 印顆(印章やゴム印など全部ひっくるめて)に朱肉やインクをつけて紙に捺したものです。
また上に述べたように紙に押すだけでなく焼印や縄文式土器の縄目模様など立体的なものも印影と呼びます。
続きまして用語の解説に移ります。
印材 : 捺しても印影の無い状態の印顆のことです。言い方を変えると字や絵が彫っていない印顆(はんこ全般)のことです。
例えば柘(つげ)の木を切るだけでは印材とは言えません。ハンコの素材です。水牛の角も象の牙もハンコの素材です。
それらをハンコに使いやすいように成形したものが印材です。なので印章店は印材の形で印材屋さんから仕入れることになります。
印面(いんめん) : 印影を採るために印材に字や絵が彫ってある面を印面といいます。
印側(いんそく) : 印面に接した面です。角印では平面となりますが、丸印では弧を描きます。
ここにはそのハンコを彫った人の銘を入れることがあります。印側に入れる落款を側款といいます。
天(てん) : 印面の反対側にある面です。ここは平面であることもありますが、多くは半円状になっていることが多いです。
鈕(ちゅう) : 印顆の天の部分にある把手やツマミの事です。ここには彫刻がしてあったり飾りがついていることが多いです。中国古代の漢の時代には印章は階級を示すものとなりました。そこで鈕に様々な彫刻が施されたと思われます。また鈕に開いている穴に紐(ひも)を通すことがあります。この紐を印綬(いんじゅ)と言い、その紐の色によっても階級の違いを表すものとなりました。
とてもややこしい内容でしたが、少しでも何かのお役に立てれば嬉しいです。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。
河政印房 店主
参考文献 水野恵 著 「印章篆刻の栞」 芸艸堂